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缶バッチの歴史・ルーツ・由来を詳しく解説してみます

缶バッジの歴史、由来のタイトル画

お客様より「缶バッジはどこが発祥なのですか?」「缶バッチっていつ産まれたのですか?」などのご質問を時々いただきます。その都度メールにてお返事させていただいてました。缶バッジの歴史というと大袈裟ですが、どこでどのように始まったのかは気になるところですね。ネット上では「アメリカで産まれた」とか「選挙で使われた」とか色々書かれていますが、どれも情報の量としては少なくて詳しく説明しているサイトはなかったですね。ということで缶バッジのプロが歴史を詳しく解説させていただきます。

今とはちょっと違う缶バッジのルーツ

缶バッジはアメリカが発祥になり、もともとは政治的キャンペーンや選挙の活動で利用されていたといことは知っている方も結構多いのではないでしょうか。缶バッジというと若い方からしたら最近ブームになっているので歴史は浅いという印象がありますが、歴史は古くて、1789年にアメリカのジョージ・ワシントンの支持者によって作られました。もう200年以上の歴史があるのですね。

ただし、この時はまだ現在のような缶バッチとは少々違っていて、バッジの全面が金属でできていて、裏には服などに縫い付ける穴足が取り付けられていました。ジャケットやコートなどの洋服についている飾りボタンと同じイメージです。このことから缶バッジの英語名が「button」とも呼ばれています。また、コインのような形状で上に穴が開いていて、そこに紐を通して首からぶら下げるという、ペンダントのような使い方もされていました。こうしてみるとバッジとは違うじゃないかと思われる方も多いかと思いますが、これが缶バッジのルーツになります。「Badge」はもともと議会や警察署、消防署などで使われていて職位や地位などを表して、当時はキャンペーンや活動などでは使うものではなかったのです。従って「Button」という方が適切だったのでしょうね。

引用:zippypin.comのページより

この「Button」に初めて写真を入れたのは1860年の「エイブラハム・リンカーン」の政治キャンペーン活動によるものでした。金属のボタンに文字を掘ったり、エンボスなどの加工しただけのものから写真を入れるようになったことは画期的でしたが、これも穴が開いていて紐を通すようなもので、まだ針がついたバッジのような機能はなかったのです。しかし、この時代にこのようなきれいな写真が撮れるということも驚きです。

 

1896年には缶バッジの特許が取得されていた

この後1896年にようやく現在の缶バッチの形ができ上がりました。バッジの上に写真を載せて、その写真を傷から保護するために透明なセルロイドのフィルム重ねて作成するというものです。バッジの原稿というと当時は写真がほとんどでしたが、写真原稿はとても傷つきやすかったので、その原稿を保護するためにセルロイドのフィルムを利用したことがアメリカで特許取得されました。(現在ではバッジのフィルムは透明のPET素材を使っています。セルロイドは引火しやすく危険なため使われなくなりました。)

さらに、バッジの裏にワイヤーのピンを取り付けることによって簡単に衣服に装着できるということで特許が取得されました。(ちなみにアメリカのニュージャージー州にあった「ホワイトヘッド&ホーグ」という会社です。)特許にある仕様をみますと、現在ある25ミリの「の」の字ピンの缶バッジと同じような仕様です。この頃から「Pinback Button」と呼ばれるようになり、さらに数十年後から「Button badge」とも呼ばれるようになってきました。この缶バッチの英語名での呼び方等については以前「缶バッジ?缶バッチ?どれが正しいの?」でご説明しましたが、日本語に訳すと、裏にピンのついたボタン、ボタンのようなバッジということになります。

 

缶バッジが使用された「歴史」

缶バッチは、アメリカ国内では大きく分けると「広告」「政治」「戦争」などで利用されてきました。広告としては、1898年には当時有名だった漫画キャラクターの「The Yellow Kid」を印刷したものをガムなどの景品として一緒に販売していました。政治としては、多くの大統領選挙において候補者の顔を印刷した缶バッチを製作して有権者にアピールしていました。また、「戦争」では、1899-1902年のボーア戦争における愛国心の促進のためのキャンペーンや1907年のガンディーのインド独立運動においても大量に輸出されました。一方、「反戦」の運動のアイテムとして「ピースマーク」が印刷された缶バッジが作られ反戦運動に一役買っていました。そしてその後も多くの場所で様々な形で利用されています。

缶バッチを製造する会社は他国でも設立されるようになってきて、イギリスでは「Better Badges(後にA Better Badgeに社名を変更)」という会社が音楽関係に特に力を入れていてパンク系を中心とした音楽アーティストの缶バッチが大量に作られました。この会社が採用していた大きさが1インチ(25ミリ)だったため、音楽業界では25ミリの大きさが一般的になったのかもしれませんね。

「日本では1970年代頃から米国資本の会社による広告キャンペーンで使われるようになりました。そして80年代で缶バッチが有名になったのが「お名前缶バッジ」です。これは、「たろう」「まゆみ」といった名前をひらがなで印刷しただけという簡単なものでしたが、当時は原宿や渋谷などで販売されていて流行っていました。この後ブームが収まったかのように見えましたが、2010年を過ぎた頃からアニメやゲームのブームに乗ったように缶バッジの需要が急速に高まってきました。日本ではあくまで楽しむためだけに利用されてきたので平和ですね。

缶バッジの歴史をなるべく細かく説明させていただきましたが、お分かりになりましたでしょうか。日本では「缶バッジ」ですが、アメリカでは「Button」の機能と「Badge」の機能の両方があってそれが「Button Badge」となったということで、名前の由来等が理解いただけたかと思います。歴史的な流れを知ると名前の意味もさらにわかりますね。

老舗と呼ばれているオリジナル缶バッジのお店です